食卓の、お皿の色は、オレンジイエローが理想的……そう言われるのを知っているだろうか? 色の効果が食欲を高め、気持ちを前向きにし、心身を軽やかにし、幸せな空気感を作ってくれるから。そして何より文字通りのビタミンカラーが、レモンやオレンジをイメージさせ、それだけで元気を生むからである。 なんだか良いことずくめだけれど、さらに言えば個人的には「シチリアの地」をまざまざと思い出させてくれるからこそ、食卓には無意識に黄色を飾りたくなるのかもしれない。シチリアのイメージは、まさにレモン一色。あちこちで見かけるレモンツリーからは、まぶしい太陽の光を受けた目の覚めるように鮮やかなレモンが、まるで星のごとく降り注いでくるし、街に点在するグラニーテバーを見かけるたびに口の中にほのかな酸味が広がって、たまらなくレモンが欲しくなる。これはレモンで作ったシャーベットを売る店だが、シチリアでは朝からブリオッシュにこのグラニーテを乗せて食べる習慣がある。レモンなしではこの地を語れないほどなのだ。
そして野菜に魚介、スイーツと、食べるもの全てが記憶から離れないほど美味しいのは、オリーブオイルとレモンの香りが常にそれらを引き立てるからだろう。黄色い食器は、そんなシチリアの味覚と視覚と嗅覚の、さらに言えばあのレモンを大きいまま絞ったときの、弾けるようにみずみずしい感触と高揚感の記憶をも引き出してくれるのだ。 初めて南イタリアを旅した時、太陽の煌めきと、透き通る海の青さとともに、女性たちの美しさに目を奪われたもの。しかしその美しさの秘密を聞いても、「特別なことは何もしていない」との答えばかり。だから思うのは、これだけ紫外線を浴びながらも彼女たちの肌がなめらかで均一なのは、他でもないレモンを毎日大量にとっているせい?いやそうに違いないのだ。